船内で船員の毎日の食事を提供する人のことを司厨士といいます。
正確には船舶調理師と言いますが役職名は司厨長又は、司厨員です。
初めてこの職に就くとまず司厨員からスタートして経験をつみ船舶料理士の免許を取ると司厨長に上がることができます。
今はかなりの船員不足でどの部署もひとが足りてない状況で船舶料理士の国家試験を一部緩和したみたいですね。
以前は、司厨員としての経験が1年以上だったのですが今はなんと、3ヶ月の乗船履歴があれば試験の資格が与えられるみたいですね。また、陸上の調理師免許を既にお持ちの方なら先輩司厨長と1ヶ月相乗りするだけで船舶料理士に切り替えも可能になりましたね。
さて、今日は僕が以前働いていたレストランのときと司厨長になってからの仕事の違いや転職して感じた調理師と司厨長の違いを公開していこうと思います。
レストランで働く調理師のヤリガイ
僕は料理の鉄人をみて料理の世界に入ったのですが、働いてみるとただ好きなだけでは続けていくのが正直、心が折れそうになることがたくさんありました。
でも、調理師としての楽しみやヤリガイが自分の中にもあってそれを目標とでも言いますか、その気持ちが支えになってました。
それは、何かというと料理が好きと言うことです。単純ですが・・・。
僕はフランス料理をやっていたのですが毎日新しい事を覚えたり試作品を作ることが一番楽しくて、それがモチベーションにもなってましたし、
あるとき、お客様に提供した料理が喜んで貰えて「美味しかった」。などの声をいただいたときは調理師になって良かったなとおもえました。
料理に真剣に向き合い素材をいちから調理し最高の状態で料理をお客様に提供できることが調理師のヤリガイだと思います。
司厨長としてのヤリガイ
調理師として今までやってきた知識や技術を発揮できる職業だと思います。
船で作る料理は家庭料理がメインなので僕からしたら畑違いも良いとこだったのですが今までの経験を生かして船員に美味しいと言ってもらえる料理を提供することが出来るので今までもってた技術も発揮できます。
船員の方は面と向かって美味しいとは言ってくれません涙。
でもこの司厨長と乗りたいとか、この司厨長が作る料理は美味しいとか人づてに聞いたときはモチベーションもあがるし、もっと美味しい物を作ってやろうと思えます。
ヤリガイその② 自分の時間がもてる
陸上で調理しをしていたときは、時間に追われ数字に追われる毎日でした。
次の日の仕込みの準備など考えることもいっぱいで下っ端の頃は休みになると緊張が途切れるのかよく熱が出て、休みが熱で潰れてました。
司厨長に転職するとこれらが一気に改善されました。
陸上で働いていたときは
毎日数字やその他イロイロな雑務があったわけでパソコンに向き合ったりする時間が多くなってましたが、今は料理にキチンと向き合えてるかなと思います。
なによりも、レストラン勤務時は出来なかった自分の時間がかなり作れると思います。
だから今までできなかった趣味や、やりたかったこともできています。
たまに本格フレンチとはいかないですけど、それっぽい料理を出したりして船員の顔を伺ったりして様子をみて楽しんでます。自己満足ですけど。
自分の料理を試せたりもしますので料理の腕も磨けますよ。
ヤリガイその③ 色んな場所にいける
色んなところに行けるんですよ。仕事ですけどね。
寄港地で買い物や食材仕入れをするのですが、その土地にしかないものなど見たときには料理人魂が出てどんな調理をしようか悩んだりすることもあります。
贅沢な悩みですよね。
休みの日には観光も出来るし、他の仕事じゃあり得ないですよね。
でも船員になると出来るんです。タダで行けちゃうから良いんです。
船内での司厨長の仕事パターン
レストランで働いてたときは朝8時くらいに出勤して帰るのが12時回ることも多くありましたが、司厨長になると食事の提供時間も決まってますし多くても15名分の食事の準備でいいので早く準備すれば早く終わるしダラダラしたらそれなりの時間になります。
ということは、自分のペース配分で仕事が出来るのです。
勤務時間も以前は12時間とかザラでしたが今は基本的に実働8時間前後でやってますので陸上の調理師よりも勤務時間も短いですね。
場合により長くなるときもありますが。
仕事が終わると朝食の準備までフリーなので、ダウンロードした映画やテレビやゲームをして楽しんでいます。仕事が終わると自由なのでやりたいことやったっていいんです
司厨長のデメリット
3ヶ月間基本的に毎日料理を提供してるので料理のレパートリーもなくなっていきます。
さらに、自分で作った料理を自分も食べるわけでしてずっとその生活を続けているとホントに飽きてくるんですよね!!
別に同じ物を食べなければならないとか決まりはないんですが、僕は味の確認やバランスを見るために同じ物を食べてます、
でも、
司厨長によっては自分だけ適当につくって食べたりしてる人もいるみたいです。
例えば、キャベツを蒸しただけにポン酢かけて卵かけご飯とか。僕もたまにやりますが。
正直な話、ずっと自分の料理を食べてると人の作った料理を食べたくなるし自分の作る料理は味も分ってるので苦痛になってしまうときもあります。
仮リバースになったときは、食べたいものをもとめてイロイロお店情報を探して食べ物ストレスを発散してます。
よく、お母さんや奥さんが自分のご飯は別にして食べてると聞くことがあるのですが全くその通りだなと、
多少実家の母親や奥さんの気持ちがわかるようになりました。
司厨長のデメリットその①
あまり言いにくいのですが、毎日のルーティンがかわりません。
レストランなら毎日違うお客様に料理を提供して喜んで貰い対価としてお金を貰うのが仕事ですが、
そもそも司厨長の仕事の場合は船員は働きに来ているのであって生きるための料理になります、なので手の込んだ料理やオシャレな料理なんかは必要としていません。
司厨長の仕事は家庭での生活の延長線上にあるので陸上で調理師などをしていた人にとっては物足りなく感じてしまうこともあるでしょう。
毎日同じ時間に食事を提供して同じ人たちに提供するルーティンワークが3ヶ月続きますから多少なりとも飽きてきます。
まとめ
司厨長の仕事は調理師と違い調理師のようなヤリガイを感じることは難しいかもしれません。
でも、
美味しい料理を提供するという事は陸上でも船でも違いはありませんし船員を自分の料理で明日の活力を提供できる司厨長(船舶料理士)はヤリガイのある職業だと思います。
僕は司厨長に転職するとき随分、悩みましたが 今では自分の時間も作れるしやりたいことも出来る司厨長に転職して良かったと思います。